ninon's BOOK

オリジナルBL小説のブログです。

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

時雨月の音 あとがき

時雨月の音あとがき お疲れ様でした☂️☂️☂️ 皆さん楽しんで頂けましたか? 今回のストーリーは、兄雅紀と付き合っていた弟和也はいつも、皆んなから愛される兄に嫉妬して自分への愛を試す為、別れ話を持ちだします。兄の誕生日前夜、雨の日、フラれたショック…

時雨月の音53 最終回

53 paradoxを出たのは明け方。 外は真っ暗なせいか、空から降る粉雪は白くてキラキラ光り輝いていた。 もうすぐ雅紀の命日だ。 永遠に20歳にならない兄を越えて俺は生きてきた。 寂しい空の漆黒は、俺を闇へ度々引き摺り込もうとする。 キラキラ キラキラ 光…

時雨月の音52

52 Masaki Rain スッと開いた寝室の扉。 香るのは雅斗の香水。 近づく足音。 上着を脱いでフローリングに落とす音がした。 うんと冷えた空気を纏った雅斗だと直ぐに気付いて、俺は毛布を持ち上げてベッドから見上げた。 俺を見下ろす瞳が暗がりでも潤んで見…

時雨月の音 51

51 paradoxの店内はいつも通り穏やかな賑わいだった。 雅斗が相葉さんと暮らすマンションに戻らなくなって1か月が経つ。 最初こそ、衰弱するほどだった彼は最近になってようやく普段通りの過ごし方を思い出し始めていた。 相葉さんは随分痩せたと思う。 雅紀…

時雨月の音 50

50 Masaki Rain 和に一目会いたくなってしまった俺は、小雨の降る中、佐藤くんと出て行った雅斗の後を追うようにマンションを出た。 二人の姿はもうどこにも無くて、冷たい雨に打たれて自嘲の笑みが溢れ落ちた。 和とparadoxの前で会えて、俺は恥ずかしい事…

時雨月の音 49

49 Masato Rain- 「大丈夫…ですか?」 俺を覗き込みながら不安そうな顔をする龍我。 「…おまえさぁ…三回もヤッといてよく今更そんな子犬みたいな顔で心配出来るな…」 俺は毛布に包まりながら背中を向けた。 「だって…雅斗くんですよ?俺のだいっすきな…夢み…

時雨月の音48

48 俺が仕事だった事もあって、相葉さんはマンションに帰って行った。呑んで帰る事を勧めたけど、気分じゃなくてってやんわりと断ってきた。 心配する俺に、甘えてごめんねと優しく抱きしめて、頭を撫でてくれた。 いくらだって甘えると良い。 依存するくら…

時雨月の音 47

47 paradoxのオープン前、潤くんがグラスを拭きながら俺をジッと見つめる。 「な、なに?潤くん」 「ヤッただろ」 「え?何言ってんのよ、俺、昨日は」 「めっちゃ見えてるよ?首んとこ」 俺は暫く言われた意味を考えて、ハッとする。 首を手の平で押さえて…

時雨月の音46

46 Masato Rain- 龍我にグイグイ手を引かれマンションのエントランスまで来た。 「待てよっ!待てって!龍我!」 俺の手を引いていた龍我はピタリと立ち止まる。 俯いたまま顔を上げないし、手首を掴む手に更に力がこもるのを感じていた。 「いつから聞いて…

時雨月の音45

45 Masaki Rain 『で?なんだそのデッカイ犬は』 和と別れた夕方、自分のマンションに着いたら、広いリビングのソファーに金髪の若い男がグーグー横たわって眠っていた。 L字に置かれたソファーは足を投げ出した雅斗と眠っている男できっちり埋まっている。 …

時雨月の音44

44 相葉さんはあのままうちに泊まって、朝が来た。 ベッドの隣りに姿が無くて狭い部屋を見渡す。 ガチャっと玄関扉の音がして慌てて視線をやると、クシャっと笑う相葉さんが立っていた。 『朝ご飯買ってきたよ』 手には茶色い紙袋。 二人ベッドの毛布に包ま…

時雨月の音 43

43 Masato Rain- 路地裏でグズグズと涙が止まらない。 やり直せない。 俺はこんなだし、雅紀みたいに上手に出来ない。 上手に優しくしたり、気持ちを汲み取ったり出来ない。 ただ、あの部屋に入った時に感じた絶望に色をさせるとしたら、俺じゃなく…雅紀だと…

時雨月の音42

42 身体が絡む程に愛しくてたまらなかった。 雨の中、ゴミステーションで傘をさしかけて貰った日から、本当は動き出していたのかも知れない。 あの日、止まったままの時計はゆっくりと、過去から離れる為に…動いていて…。 相葉さんが俺に覆い被さって中を貫…

時雨月の音 41

41 Masaki Rain 会社終わりに勢いで乗り込んだparadoxにお目当ての彼は居なかった。 スラッとした日本人離れした整った顔の店員が、ニノなら病欠ですと、真摯に対応してくれた。 病欠? 俺はその言葉に一目散に和のマンションを目指した。 途中、携帯を鳴ら…

時雨月の音40

40 Masaki Rain 雅斗が 俺を殴ろうとしたのは初めてで… 正直、驚いた。 いつも、チャラチャラといい加減で、気が短くて、俺の事になると周りが見えなくなる奴だけど…俺以外の人にたいしてあんな風に熱くなるところを、見た事がない。 "とんだ弱虫だ" そう言…

時雨月の音39

39 雅斗と高台で鉢合わせしてから、勢いで家まで連れて来てしまって…。 結局俺は、雅斗とs Exが出来なかった。 同じ顔で、同じ声なのに…雅斗は相葉さんじゃなかった。 雅斗は、とびきり優しくて心地良い。 雅斗を選べば、俺は早々に楽になれた可能性が高い。…

時雨月の音38

38 Masato Rain- 「さぁ…て…そろそろ俺帰るわ。」 ローベッドで和の髪を撫でていた。 窓から差し込んだ光にあたると、青く光るような黒い髪に鼻先を埋めたりしながら、横たえた身体を軽く抱きしめる程度に留めて。 和は…俺に言った。 言わなくていい事まで、…

時雨月の音 37

37 「ねぇ…和…こっち向いて」 雅斗の呼びかけに、キスをして俯いていた顔をあげた。 「うっわ!見事な逆光!アハハ」 一瞬パシャっと音がする。 ケツのポケットから出した携帯電話で写真を撮った雅斗は画面を見ながら呟いた。 「近いから写ってる…和のブラウ…

時雨月の音36

36 相葉さんが出て行った。 腹に吐き出した俺の迸りに、懐かしい余韻を感じながら、ベタベタといじった指が汚れていた。 だらしなく立ち上がって、その指先で写真立ての写真を撫でた。 ベッタリと 白く 情けない。 シャワーを浴びて、暫くぼんやりしていた。…

時雨月の音 35

35 Masato Rain- 雅紀が好きだ。 それから、同じくらい大嫌いだ。 それは変わらない。 だから、バスルームから出てソファーで雅紀を抱きしめながら聞いた話の結末は 許し難かった。 「それで…兄貴、和を置いて出てきたのか?」 それ以上…言わないでと… 帰る…

時雨月の音34.

34 Masato Rain- マンションには帰らないつもりだった。 雅紀が和の事を本気な気がしたからだ。 好きかも知れないなんて答えてたけど、その表情はすっかり魅せられた男のソレだった。 俺と和…比べられないと言った雅紀。 兄貴への名前もない感情を持て余す俺…

時雨月の音 33

33 Masaki Rain 小さな本棚の上の写真立て。 和の肩を抱いて、幸せそうに笑う青年。 心臓が口から出そう。 いや、全身の毛が逆立つ様な… 違う…身体の血がグツグツ沸騰していく様な そのどれとも表現し難い驚きだった。 写真には…… 俺が写ってる。 いや、俺じ…

時雨月の音 32

32 Masaki Rain 返事を貰えないまま、脚の間で白い身体が丸くなる。 黒い艶のある髪が、揺れるのを見下ろしていた。 『っ…ハァ…和…っ…また…勃っ ちゃうよ』 「…良いんだ…しよ…俺の中…ドロドロにしてよ」 俺は上目遣いに呟いてまた奉仕を始める和を見て手の平…

時雨月の音 31

31 マンションの鍵を差し込んで回したのは相葉さん。 俺はただもう、酒も飲んじゃいないのに、意識はボンヤリと夢の中だった。 『鍵、ここに置くよ』 相葉さんがそう言って、シューズラックの上に鍵を置いた瞬間に我慢の糸はプツリと音を立てて切れた。 唇に…

時雨月の音30

30 相葉さんが来店したのはオープンしてすぐだった。 今日もカッコよくスーツを着こなしていて、モデルをしてるっていう雅斗の仕事は頷けるものだった。 何せ全く同じ顔に体型に声…。 どっちがどっちの職場に行ったって平気でI日くらい乗り越えられそうだ。 …

時雨月の音29

29 「あ、ニノそっち拭いといて」 先輩の潤くんがテキパキ指示を出してくれる。 「オッケー。」 「あ、そうだ!今日さ、大野さん新しい酒入れるって」 リキュールの瓶の口を丁寧に拭く潤くんが俺に告げた。 「あ、じゃあ来るんだ?」 「らしいぜ。」 「…分か…

時雨月の音 28

28 Masato Rain- 「はーい、雅斗こっち向いてぇー、どしたぁ〜、なぁんだ?浮かない顔して?」 「へ?そう?普通じゃね?」 俺はカメラマンの言葉に前髪を掻き上げる。 「いや、ちょい休憩入れよう」 「俺、大丈夫だよっ!」 「鏡みてこぉーい。」 ギュッと…

時雨月の音27

27 Masaki Rain 仕事が終わって会社の上司から仕事の伝言を預かる。 切った電話を見て目が点になった。 一個前の着信…和くんになってる。 しかも、少し話してる? 通話時間が表示されていて、深酒した事を後悔した。 朝、起きた時、まだまだ酒が残ってた。 …

時雨月の音 26

26 Masato Rain- 朝の電話に気づいたのは偶然仕事が早朝撮影だったから。 じゃなかったら、あの寂しい子猫ちゃんの電話をとる事はなかっただろう。 雅紀は大して飲めない酒に疲れてぐっすりだった。 隣りで喋ってたって気づかなかった。 俺をビンタした強気…

時雨月の音25

25 高台からみたオレンジ色の空… ピンクになるのを見せたいって…雅斗は微笑んで言った。 それは約束じゃないけど、何故だか叶えたい気持ちが膨らんだ。 「俺、こっち。じゃ、またな」 十字路の交差点まで歩いて、雅斗はヒラっと俺に手を振った。 「え?ぁっ…