ninon's BOOK

オリジナルBL小説のブログです。

時雨月の音42

42

 


身体が絡む程に愛しくてたまらなかった。

 


雨の中、ゴミステーションで傘をさしかけて貰った日から、本当は動き出していたのかも知れない。

あの日、止まったままの時計はゆっくりと、過去から離れる為に…動いていて…。

 


相葉さんが俺に覆い被さって中を貫く。

その度に肩にかかった俺の手が爪を立てて傷をつけた。

痛みで眉間に寄る皺が俺に"今"を見せて、抱かれている相手が雅紀じゃない事を突き付けてくる。

「まさっきっ!!もっとっ…」

『和っ…呼んで…俺の名前っ…ちゃんとっ!呼んでっ…』

俺は相葉さんに揺さぶられながら、ハッとする。

 


あぁ…雅紀は…雅紀じゃない。

もう…俺の雅紀は…相葉さんなんだね。

 


「雅紀っ!雅紀っ…好きっ!ぁっ!ぁあっ!雅紀っ!!」

 


俺は…間に合ったんだよね?

初めてきっと…間に合ったんだ。

「雅紀っ…」

『和っ…』

 


無くしたくない。

 


愛されたい

愛されたい

願わくば…

そう、目の前のあなたに。

 


グッタリと力の入らない汗ばんだお互いの身体を離せず夜がふけていった。

 


狭い部屋の過去がゆっくり色をつけていく。

「相葉さ」

『雅紀…俺の名前だよ?ゆっくり…呼んで』

ベッドで、寝転び向かい合う俺に優しい声音で囁く。

俺は彼の頰を撫でながら呟いた。

「ま…さき…雅紀」

『和…俺の恋人になって』

 


じんわり滲む視界。

涙が頰を伝う。

ギュウっと抱き寄せられて、ハァーっっと息が漏れた。

 


「…宜しく…お願いします。」

呟いた唇はすぐに塞がれて、甘い舌先がまた俺に火を付けた。

 


幾ら求めても足りない程に

愛されたい

愛したい

 


「雅紀…愛してる」

『俺もだよ。和…愛してる』

 


愛してる。

愛したい。

愛されたい。

ただそれだけだったんだ。