ninon's BOOK

オリジナルBL小説のブログです。

時雨月の音 41

41

 

 

 

Masaki  Rain

 

 

 

会社終わりに勢いで乗り込んだparadoxにお目当ての彼は居なかった。

スラッとした日本人離れした整った顔の店員が、ニノなら病欠ですと、真摯に対応してくれた。

 


病欠?

俺はその言葉に一目散に和のマンションを目指した。

途中、携帯を鳴らしてみる。

コール音はするのに、出てくれない。

余計に焦った。

 


体調が悪すぎて出れないのか、それとも、あんな事を言わせた俺が嫌で出てくれないのか…。

 


立ち止まって息切れしてる自分に気付いて、paradoxから和のマンションまで、走っていた事に驚いた。

 


若くないな…

横っ腹は痛いし、喉も痛い。

 


インターホンを押す指先さえ、若干震える程に疲労していた。

 


ガチャッと玄関扉が開く。

 


少し泣き腫らした赤い目元の子猫が俺を見るなりギュッと抱きついてきた。

横っ腹の痛みが瞬間的に飛んでいく。

俺はただその華奢な身体をしっかり抱きとめていた。

 


『ごめん…俺…』

「ふふ…やっぱり…違う」

『え?』

「匂い…雅紀じゃない…相葉さんは…雅紀じゃなかった」

 


スリっと胸元に顔を埋める和。

『和…好きだよ…俺ね…お兄さんの代わりは出来ない。俺を…代わりにしないで。俺を、好きになって欲しい』

和は上目遣いに俺をジッと見つめて、涙をポロポロ流す。

 


「相葉さんが……好き。相葉さんが好きなんだ。」

初めて会った日と同じだった。

 


視線が絡んだら最後。

縺れてベッドに入る。

覆い被さって体重をかけながら押さえ込む。

逃がさないように、乱暴な優しさで。

 


『体調…悪いんじゃなかった?』

「…ズル休み…….俺、雅斗を傷つけた」

『雅斗…来てたんだね』

小さく頷くと消え入りそうな声で呟いた。

「相葉さんじゃないとダメなんだ」

和の首筋に唇を寄せながら呟いた。

『雅斗には…譲れない。辛い言葉…言わせてごめん…もう…逃げないから』

背中に回った手がギュッと俺を引き寄せた。

 


和の中にある寂しさを引きずり出して消し去りたい。

 


狭い部屋の暗い過去が弱虫の俺を奮い立たせてる。

 


寂しい顔をしないで。

ずっと

側にいるから。