高橋さんと藍くん 78
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「ベッド…行きます」
藍は果てた文也を湯船から抱き上げた。
「少しのぼせましたか?…水…持って来ます。っ!!…た、高橋さん?」
「い、行かなくて大丈夫…側に…居て」
白い肌をピンクに染めた文也は藍の手首を離さなかった。
「離れると…ちょっと…恥ずかしくなりそうだから」
文也は自覚がないから恐ろしい。自分が相手をどれくらい煽っているか気づいていないのだ。
「…わかりました。」
藍は昂る気持ちを抑えながらベッドに横になる。文也を引き寄せ、胸元に抱き込んだ。
「夢みたいだ…」
文也は胸元から上目遣いに藍を見上げる。
目が合うと、藍は柔らかく微笑み、文也の前髪を撫であげた。
それから、銀縁の眼鏡を外し、サイドテーブルにそっと置く。
「高橋さん…好きです」
文也に覆い被さるように顔の横に手をついて呟いた。
文也もまっすぐ藍を見上げ、一度唇をキュッと結んでから、スゥッと息を吸い、返事を返した。
「…僕も…君が好きだよ…多分…もうずっと昔から」
藍は文也の額に自分の額をゴツンとぶつけた。
「あなたは何回無自覚に俺を煽るんですか?…もう、離してあげませんからね」
そう言って、鼻先を擦り合わせるようにしてから、目を合わせたままキスをした。
何度も何度も
下唇に噛みつき、口内を舌で犯し、また上下の唇に噛みつくようにキスを重ねる。
「んっ…藍…くんっ…っはぁ……ぁっ!」
手をゆっくり文也の熱に掛け、頰、顎先、首筋と舌を這わせながら、小さな胸の尖りに舌を絡ませた。下をユルユルと柔く扱きながら、執拗に胸を舐める。たまに歯をたて、文也の身体が弓なりに反るのを目を細めながら堪能した。
文也は口を腕で塞ぎ、声を殺そうと必死だ。
藍はその腕を優しくベッドに押さえつけて、耳の中まで愛撫しながら囁いた。
「高橋さん…全部俺のものになって…声…我慢しちゃダメです」
「んぅっ…」
深いキスで返事さえままならない。文也は頭の芯がドクドク脈打つのを初めて経験していた。
藍に微かに触れるような半端な快楽を与えられた下半身はまるで十代かのように反り勃っている。あちこちに降り注ぐ快感は自分を見失う程に深く怖かった。
「藍くんっ!ダメだっ…僕っ…イッ…もうっ」
藍は全身に唇を這わすように肩の丸みに舌を這わせながら懇願する文也と目を合わせた。
「…可愛い…でも、もうちょっと我慢」
藍は上気した顔で文也の熱をギュッと強く握った。
「ヒィッ…ぅゔ…ゃ…ヤダ…あ、藍くんっ」
フワフワのブラウンの髪を揺らしながら顔を顰め首を左右に振る文也。前髪が汗で額に張り付いて乱れる。
「はぁ…すげぇ…エロい…」
吐精感を抑えつけられ、身を捩る文也に舌舐めずりが漏れる藍。
今まで、ずっと抱きたかった人の乱れる姿は想像を絶する絶景だった。
「高橋さん…息、吐いて」
文也の立てた膝にキスしながら藍はゆっくり自分の長い指を咥え唾液を絡めた。
そのまま滴る程濡れた指を文也の後ろに擦り付ける。
「ぁっ!藍くんっ…」
膝同士を合わせ、身体に力が入る文也。
藍はもう一度体を上げ、文也を抱きしめた。
「大丈夫…ゆっくりします。」
「んっぅ…」
深いキスの後、藍はまた体を下にずらして、文也の合わさった膝を左右に押し開いた。
握っていた文也の熱を手放し、優しく強く擦っていく。
我慢の限界だった文也はあっという間に追い上げられ射精した。
腹に散った白濁を掬い、それをローションの代わりに使う。
グチュッと卑猥な水音は藍の脳内に響き、自分でさえ触れてもいないのに先端から滴るくらいに先走りの汁が垂れた。
浅い箇所で出し入れを繰り返し、ようやく三本の指が入った頃には文也は最初とは比べ物にならない妖艶な顔をしていた。
薄い腹がヒクヒクと痙攣を繰り返す。
「藍くん…もぅ…僕…」
甘い声で藍の髪を撫でてくる。
「高橋さん…なんて顔してるの…もしかして…もう欲しい?」
藍の言葉に文也はドクドクと熱を持つ頭でキュッと目を閉じて頷いた。