高橋さんと藍くん 80
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「関…離せ」
「課長…俺が嫌いっすか?」
ソファーに座る宝井の足元に座る関は俯いたまま呟いた。
宝井が前髪で表情が見えない関の髪を撫で上げる。
「早急だとはおもわねぇか?」
「もう…進め方が分からないです」
「分からないって…」
「今まで簡単だったからっ…全部簡単だった。なのにっ…今は頭が真っ白で分からない。」
「良い男が台無しだなぁ」
宝井が苦笑いする。
「…舐めていいですか?」
「何でそうなるんだ…わかんねぇままやっていい事じゃねぇだろ」
宝井が更に困った顔をすると、足に挟まるように座る関はソッと股間に手を掛け泣きそうな顔で顔をあげた。
「課長のそういう困った顔も…笑った顔も…好きです。…知らない顔を見たくなる…俺だけ知ってる顔を…もっと見たくなる」
ベルトは引き抜きかれ、スラックスのファスナーも下げられ、乱れた衣服から見える下着に指を掛け、生地の上から舌を這わせた。
グッと頭を引き離されても、関は歯向かうように顔を歪ませ下着に唇を寄せた。
「関っ」
「本気でダメなら…蹴り飛ばして下さい」
宝井は大きく溜息を吐きバチッと自分の顔を手のひらで覆った。それから、フゥーッと息を吐きながら、眉間に皺を寄せ、関を引き離そうと頭を押していた手を緩めた。
関は上目遣いで宝井と目を合わす。そのまま、下着から宝井の男根を出して、直に舌を這わせた。
「…勃ってる」
「生理現象だ」
「それでもいいっすよ」
口内に唾液を溜めて喉奥まで咥え込む。
頭の上から、甘い吐息が漏れ落ちてくる。
「っはぁ…」
関の頭に置かれた手が、髪の中に指が潜り、いやらしく動く。
関にとって、それはすでに宝井からの愛撫だった。
甘い吐息も、髪を撫でる手も…。
咥えたまま上目遣いに見上げた宝井の姿は大人の色気を孕み、ただでさえ好きな顔が自分のしている浅ましい行為に目を細めているのが堪らなく興奮した。
「もうよせ…出ちまう」
宝井の言葉に更に興奮する。
関はチュパッと唾液を鳴らしながら反り勃った熱から唇を離さず喋った。
「課長…出して下さい」
「チッ…そこで喋るな…」
「気持ちぃんだ」
関はニヤッとほくそ笑んで、また深く咥え込んだ。上下させる唇と合わせて根本を手で扱く。
「…っくそっ…」
宝井はグッと眉間に皺を寄せてビクッと身体を揺らした。
「んぅっ!………」
関の口内に熱い迸りが注がれた。
「っはぁ…はぁ…おい…ティッシュ、ほら」
宝井がソファーの端にあったティッシュボックスから数枚引き抜いて関の口元に押し付けた。
「悪い…早く出せ」
すまなそうに宝井が身を乗り出すと、関はゴクッと喉を鳴らした。
「おまっ!ちょっ!飲んだのかっ!?」
慌てる宝井に対して、関は唇を指で撫でながら呟いた。
「出すわけないでしょ…こんなに好きなんだから…」
関は自分でも驚いていた。
口の中で吐き出された白濁は濃い味で、勿論、本来、美味いものではない。
ただ、それが宝井のモノであると認識しているだけで、関にとっては堪らないものに変わったのだ。
こんなに好きなんだ…
頭が真っ白になっていた。自分がした行為や、明日からの仕事を考えたら、とてもして良い行為の数々ではない。
「はぁ…マジで…俺…すみません…」
関は手で顔を覆い、項垂れた。
「…口、洗って来い」
「…うす」
「ほら、立て」
宝井は立ち上がり、フローリングにへたり込んだままの関の腕を引いた。
ヨロッと立ち上がった関を宝井は腕の中に引き入れる。
「か……課長?」
「……悪い、洗面所あっちだ」
宝井はパッと関を離し、顎で軽く行き先を示した。
「課長」
「あぁ!悪りぃ、気にすんな!さっさと洗って来い」
眉間に皺を寄せて視線を逸らしたままの宝井に、関は一瞬困惑したものの、言われた通り口を洗いに洗面所に向かった。