ninon's BOOK

オリジナルBL小説のブログです。

時雨月の音25

25

 

 

 

高台からみたオレンジ色の空…

 


ピンクになるのを見せたいって…雅斗は微笑んで言った。

それは約束じゃないけど、何故だか叶えたい気持ちが膨らんだ。

 


「俺、こっち。じゃ、またな」

十字路の交差点まで歩いて、雅斗はヒラっと俺に手を振った。

「え?ぁっうん…また」

思わず閉じた傘の柄をギュッと握って立ち尽くす。

雅斗は一度も振り返らなかった。

やっぱり良く分からない奴だ…なんて思いながら雅斗とは逆を向いて歩き出した。

マンションに帰って仕事に行く準備をしなきゃならない。

色々と頭の中が整理し切らないままマンションに着いた。

 


相葉さんに抱かれて、雅斗とキスをした。

あの2人は兄弟で…その絆みたいなもんに土足で踏み込んでいるんじゃないかと、胸の奥がザワザワした。

 


どちらがどれくらい好きだとか、そんな話ではなくて…

 


雅紀の写真を手に取って呟く。

「2人もそっくりじゃ頭混乱すんだろが…バカ」

 


クシャっと笑った雅紀は…何も答えてくれない。

雅紀を愛してる。今も変わらない。

愛されたい。

愛されたい。

愛したい。

 


愛されない。

 


雅紀には

愛されない。

 


はずだったのに…。

 


コトンと写真立てを置いて、準備を済ませマンションを出た。

 


paradoxに着くまでに、何組かの平凡なカップルを見て、苦笑いしかできなかった。

 


あんな風に…普通が欲しい。

俺はなんて欲張りなんだろう。

 


雅紀…兄で男のおまえを、本気で愛した俺は

どんな罰を受けるのかな。

雅紀を試して、死に追いやった俺は…どんな罪に、問われているんだろう。

 

 

 

駅の裏まで来た辺りで携帯が鳴った。

着信は、相葉雅紀

 


「はい…」

『すみません!電話っ!朝、貰ってましたよね?!俺、出てないと思うんだけど…不在が残ってなくて、さっき会社の人から電話があって初めて和くんから電話あった事に気付いたんだっ…あのっ…朝…早かったけど…仕事終わりにかけてくれたのかな?』

焦るように喋る相葉さんの声が、いつまでだって聞いていたいほどに心地よかった。

焦る様子が可笑しくて吹き出してしまう。

「プハッフフフ…そう。朝ね、仕事終わって…マンション帰って…連絡しました。」

『寝ぼけてたのかな…ごめんね。』

俺は雅斗の事を言うべきか迷っていた。

だけど…ズルい俺は、黙ってその場をやりすごした。

雅斗とキスをした事は、いずれバレるに決まってるのに…ハラハラしながらも、欲が出ていたんだ。

 


雅斗とフードに隠れてしたキスは

何だかs E Xよりも…

あたたかかったせいだ。