ninon's BOOK

オリジナルBL小説のブログです。

時雨月の音 31

 


31

 

 

 

マンションの鍵を差し込んで回したのは相葉さん。

俺はただもう、酒も飲んじゃいないのに、意識はボンヤリと夢の中だった。

 


『鍵、ここに置くよ』

相葉さんがそう言って、シューズラックの上に鍵を置いた瞬間に我慢の糸はプツリと音を立てて切れた。

唇に噛みつくようにキスをして、舌先がお互いを捉えて絡まる。

水音は粘着質にゆっくりまったり響いて、脳の中を溶かしていく。

一種のドラックのように、相葉さんが雅紀に変わる。

 


夢なのか…そうじゃないのか…

 


時雨月の出逢い…

色も音も

蘇った瞬間。

 


「雅…紀…」

相葉さんの手の平がシャツの裾から入り込んでくる。

背中を撫で上げるように肌に触れて、あっさり上半身の服を脱がされた。

雅紀が俺にそうしていたのを思い出す。

同じように…俺の身体は冷たいのに、あいつの体温はいつも目眩がするくらい熱かった。

息を乱して俺の身体に興奮していた。

長くて綺麗な指がゆっくり肌を這う感触。

 


愛してる

愛してる

 


そう囁きながら、俺を抱いた。

 


愛しい

愛したい

愛されたい

 


「雅紀っ」

『っ…和っ…』

 


あぁ…おまえは

俺を迎えにきたんじゃないか?

 


耳に差し込まれた舌先はクチュッと卑猥な音を鳴らして下半身にダイレクトに快感を届ける。

しつこい愛撫は心地よくて、身体はいつの間にかベッドに沈められた。

覆い被さって来た重みに溺れそうだった。

相葉さんが俺の手を取って一本ずつ指先に唇を当てながら、舐めたりしゃぶったりする。

先端からビリビリと痺れるように魔法がかかる。

濡らされた指先を自分で受け入れる場所に導いて…挿し込んだ。

 


ビクンと身体がしなり、指を咥え込んだ場所はキュウッとソレを締め付けた。

相葉さんは身体を離し、俺の立てた膝に手をかけ、より大きく足を開かせる。

それを足元でジッと見ていた。

俺は自分で解す様を相葉さんに見られて興奮していた。そして、彼も俺が自らそうしている事を見つめる事で興奮していたんだ。

 


少し首を上げると、その向こうで俺の中に潜り込もうと待ち構えている熱がタラリと汁を垂らしていた。

「来て…もう…っん…」

指を抜いて相葉さんの首に腕を絡めた。

 


グチュッと音がして、相葉さんの熱が入り口を何度も擦る。

「はやっく…挿れ…て」

中を満たされたくて、ヒクヒクと痙攣する。

『っ…ハッ…あんまり煽らないでよ。我慢…利かなくなる』

相葉さんは乱暴に片脚を肩に担ぎ、俺の身体を、横向きにシーツに押さえ込んだ。

そのまま奥に入って来た熱に息が止まりそうになる。

「っっ!…ハァッ!いっ…あぁっんぅっ!もっ…と!雅紀っ!」

『くっ…!っ…ハァッ…すご…中っ…ハァ…』

身体を突いてくる快感に声が止まらず、飛びそうな意識を我慢する為に手を伸ばしたクリーム色のクマのぬいぐるみの足に刺繍が飛び込んで来る。

 


これが夢なのか

現実なのか

分からない

今、俺を抱いてるのは

 


誰?

誰?

誰っ!!!

 


「雅紀っ!!!」

相葉さんを強く引き寄せた。

ギュッと抱きついてキスをする。

サラサラの前髪を伝って汗が俺の頰に落ちた。

「イキそ…もうっ…俺っ…」

相葉さんが耳元で囁く。

『俺もっ…イクっ…イクよっ…』

「ぁっあっ…っ!くっ…」

俺の身体が軽く痙攣を起こす。絶頂を感じた瞬間…白くなる景色に、相葉さんのイク顔を焼き付けた。

 


自分でも…変態だなぁと感じながら…

俺で満たされ果てるその姿が恍惚として…

 


愛しかったんだ。

 


息が上がる相葉さんがゆっくり深呼吸するように顔の横に手を突いて身体を離そうとする。

俺は、それを許さなかった。

「抜かないで…まだ…中に居て…」

相葉さんは一瞬ビックリした表情をしながら、苦笑いした。

そして、俺を抱きしめた。

首筋に何度も何度も、キスをして。

 


俺は目を閉じてそれに甘える。

途中で飛び込んできたクマのぬいぐるみ

 


名前の刺繍…

 


息が止まるかと思った。

まるで、首でも締められたかのように…

見失わないように、相葉さんにしがみついた。

怖かったのか…悲しかったのか…

 


分からなかった。

 


『和…今更なんだけど…付き合って…俺と。』

 


身体の中の相葉さんが出て行く。

俺は四つん這いになり、返事をしないまま…

白濁に塗れた相葉さんの熱にしゃぶりついた。