ninon's BOOK

オリジナルBL小説のブログです。

時雨月の音 32

 


32

 


Masaki  Rain

 

 

 

返事を貰えないまま、脚の間で白い身体が丸くなる。

黒い艶のある髪が、揺れるのを見下ろしていた。

『っ…ハァ…和…っ…また…勃っ ちゃうよ』

「…良いんだ…しよ…俺の中…ドロドロにしてよ」

 


俺は上目遣いに呟いてまた奉仕を始める和を見て手の平で顔を塞いだ。

 


どうして…こんなにも寂しい顔をするんだろう。

今、自分がどんな顔をしてんのか分かってんのかよ…。

 


俺は和が強引に続ける行為に我を失いそうだった。

このまま…流されたって構わないんだ。

きっと和はそれを望んでる。

なら…欲望に忠実になるのも…罪じゃない。

そんな気がしながらも、意識はまだ…答えが貰えてない事を気にしていた。

すっかり勢いを取り戻した熱をまるで猫みたいにペロペロと舐めたりしゃぶったりする。

俺はそんな和の頰を包んでキスをした。

それから、華奢な身体を抱き上げて俺の上にゆっくり座らせた。

 


「はぁっ!ッァア!くっ…雅…紀っ…」

向かい合って抱き合いながら、和の身体を揺さぶった。深く沈んでは引き上げ中を擦る。

「もっ…と…中っ…」

『和っ…はぁっ…はぁっ…こっち…見て』

しがみつきながら天を仰いでいた和がゆっくり俺を見つめる。

ブラウンの瞳は鈍く輝いて、俺を映していた。

俺を…映して…。

 


「あぁっ!んっ!もう、ダメだっ!またっ…イッちゃう!!」

よがる姿に下半身が疼いて、結局気になった事をそっちのけに和をシーツに押し倒し、無我夢中で貫いた。

 


俺の腹に和の白濁が飛び散り、それを気にもせずに身体を合わせ抱き合った。

 


『…好きだよ…俺、和が…好きだ』

「……ありがとう…相葉さん」

 


和は行為が済むと、俺の事を名前で呼ばなくなった。細めた瞳で、俺を愛おしそうに見つめるくせに、何故か手応えはまるでないように感じた。

ローベッドに居座るクマのぬいぐるみは前回同様に俺を睨んでいるように見えた。

足にある刺繍にゆっくり首を傾げる。

 


kazu…Stay by my side forever.

 


…ふぅん…とか…へぇ…とか…

 


そんなんじゃ…ないかも。

感じた事のない…嫉妬心。

 


和のしっとり汗ばんだ背中を撫でた。

『和…俺と付き合って』

呟くと、腕の中の和は猫のように膝を抱えて丸くなりながら、胸元に額を当てて黙り込んだ。

『俺じゃ…ダメ?』

フルフルと頭が左右に揺れる。

「…怖い…」

『怖い?…俺が?』

和はまた頭を左右に振って、ゆっくり顔を上げると、俺の頰に手をかけながらゆっくり顔を撫で始めた。

眉…瞼…鼻筋…唇。

「相葉さん…また、店に来てね」

和は柔らかく微笑むと、また腕の中でキュっと小さくなり、寝息を立て始めた。

 


スヤスヤと眠る和の身体からゆっくり離れる。

 


狭い部屋の中。

まるである時期から時間が動いて無いんじゃないかと思える佇まいで、暗く鈍く淀んでみえた。

 


弦の切れたギター…

くたびれたテディベア…

はしゃぐタイプに見えないのに、真逆なんじゃないかと思える使い込んだバスケットボール。

 


どうしてだか

和の物だとは思えなかった。

雑に置かれているはずなのに…

 


そう感じないのはどうしてだろう。

漫画本が並んだ本棚の上に写真立てを見つけた。

 


こっからじゃ見えないな…

 


俺はローベッドから立ち上がって一歩、また一歩と近づいた。

 


近づいて…

 


息を飲んだ。