時雨月の音48
48
俺が仕事だった事もあって、相葉さんはマンションに帰って行った。呑んで帰る事を勧めたけど、気分じゃなくてってやんわりと断ってきた。
心配する俺に、甘えてごめんねと優しく抱きしめて、頭を撫でてくれた。
いくらだって甘えると良い。
依存するくらい、苦しくなるくらい…
俺はあなたにそうされる事を、酷く望んでいるから。
勿論…仕事なんて、殆ど手につかないまま潤くんに迷惑をかけたのは言うまでもない。
一人呑みで通って来る今や潤くんの彼氏、翔さんは相変わらず店のカウンター奥の席にいた。
二人は時折、目を合わせ微笑み合う。
潤くんは普段、俺様なところがある人なのに、随分と可愛らしく見えた。
恋ってヤツは病気のようなもので、時として残酷に人を変えてしまう。
相葉さんが、恐らく命より大切だろう雅斗より、俺を選ぶように…。
そして、俺も同じように血を分けた最愛の兄を忘れて、相葉さんに溺れてしまうように…。
相葉さん…ちゃんとマンションに帰ったかな…。
雅斗は…今…その男と…どうしてるんだろう。
自暴自棄になってる?
それとも…
俺と同じように…違う愛に
出逢ったんだろうか。