虹 51
51
相葉さんはスーツのジャケットを脱ぎながら内ポケットから携帯を取り出した。
パソコンの画面を見つめていると、ハンガーにスーツをかけながら、肩で携帯を挟んでる。
どこかに連絡しようとしているようだった。
ピピピピ…
高い電子音が鳴り響く。
それは間違いなく俺の携帯の着信音で、スラックスのポケットで何度も高らかに…。
「出たら?大好きな相葉くんだぜ」
松本さんはクスッと笑った。
俺は手を縛られているから電話に出られる筈もなかった。
「潤…」
「キスして」
俺の前で胡座をかいた松本さんが前のめりになり、俺を覗き込むと、顎を掴んで上向かされた。
俺は必死に応える。
携帯の着信音と、キスで絡む舌と唾液の水音。
気が遠くなりそうだった。
罪を犯したら、必ず罰が下る。
松本さんが舌を引き抜いて俺のスラックスのポケットを弄った。
携帯を引き摺り出し、画面をタップする。
耳に押し当てられた携帯。
松本さんはシーッと人差し指を自分の唇に押し当てウインクした。
『もしもし、ニノ?』
「ぁ…うん」
『今…帰ったよ…。』
「お、お疲れ様」
『うん…ニノ、何してた?』
携帯を耳に押し当てるのをやめる松本さん。
スピーカーホンに切り替えて携帯を俺の隣に置いた。
「な、何も…あっ!」
『ニノ?』
「ぁ…相葉、さんっ!ちょっと!あとでかけ」
目の前の松本さんが首を左右に振る。
口パク で” 続けろ” と指示が出る。
『ニノ?大丈夫?』
「大丈夫…今日疲れたでしょ」
何とか早く電話を切らなくちゃ…
『大丈夫だよ。お昼…あんな事させて…ごめんね。でも…嬉しかった。ニノ、可愛かったし。』
最悪だ…
「ぁ…ヤダなぁ…相葉さん、ご飯は?」
『家に何もないからね、食べて帰ったよ。ラーメンだけどね。ニノは?』
「ぁ…あぁ…俺は…」
松本さんが俺に突きつけた。
彼自身の熱を…
耳元で吐息を混じらせ囁く。
「でっかいフランクフルト食べるって言えよ」
…俺は、うつ伏せでありながら、自分の熱棒が盛るのを感じていた。
息が…荒くなる。
「帰りに…フランクフルト…買ったんだ。おっきくて…美味しそうだったから」
鼻先に突きつけられた松本さんの熱に舌を絡めた。
クチュッと音を立てて先端を唇で挟んでみる。
松本さんが俺の前で足を広げて髪を撫でながら、熱い吐息を漏らす。
『ニノ、なんかエッチだね。昼間を思い出しちゃうじゃん…』
松本さんの手が乱暴に俺の髪を掴んでモノを喉奥まで咥えこまされる。
「ぅゔっ!!」
『ニノっ?』
「っはぁっ!!…っっなっ!何でもないよ!ちょっとむせただけ!お茶が溢れちゃった!ちょ、ちょっと切るね!!」
松本さんがニヤリと笑うと携帯をタップして、通話を切った。
俺はギリッと唇を噛む。
松本さんは俺の前髪を鷲掴みにして顔を引き上げた。
「なぁ…おまえ、何でそんな淫乱なんだよ。昼間っから相葉くんと何してたわけ?こうやって、アイツのもしゃぶってたんだぁ」
グッと熱の先端を唇に押し付けられる。
「腹立つなぁ…限界あるっつったよな?」
俺はジワリと込み上げる涙を我慢出来なかった。
懐かしい恋心を思い出す。
元カレも俺を束縛した。
酷いやり方で、何度も何度も裏切るくせに、俺の自由だけは許さなかった。
それが…
深い愛だと長い時間…
勘違いしていたんだよ。